2017/07/20
?」
その瞬間、今度は奇異な言葉すら出なかった。
数秒の後、俺は何とか言葉をひねり出す。
「協力してくれるんですか?」
「当然じゃろ」
たまもは宝石みたいに光を乱反射させる綺麗な紅色の瞳で俺を見据えながら即答する。
大妖怪白面金毛九尾が何処にでも居そうで三流っぽい一つ目妖怪の確保に協力してくれる。普通に考えれば願ってもない話である。それはもう歓喜に打ち震えて然るべきである。しかしながら、なまじ妖怪との付き合いに心得が有るばかりに、俺は大いに逡巡してしまうのだった。
「うおい! 何じゃ、その態度は! 妾の助力が不満なのか?」
たまもは二つ返事で同意を得られるとでも思っていたのだろうか、不機嫌そうに片眉を吊り上げる。
「いや、そんなつもりは……」
「では何故じゃ? この白が直々に手を貸そうと言うのじゃぞ。本来ならば泣いて懇願しても叶わぬような有難~い申し出じゃ。迷う要素など皆無じゃろ。何故お主は躊躇うのじゃ? アレか、阿呆なのか? お主は阿呆なのか陽光女傭?」
大事な事なので二回言いました的なノリで阿呆を連呼せずとも、事の希少性は理解しているつもりである。だが幾ら希少だろうと、有り難かろうと、安易に頼めない事情が俺に有るとするならば、二の足だって踏むというものだ。
「むう? 妾の好意に二の足を踏む事情じゃと? 言うてみぃ。但しその事情とやらがくだらん事じゃったら承知せぬからな」
語尾に僅かな威圧を伴ったたまもの問いに気圧されつつ控えめに答える。
「……実のところ見返りを支払えそうにないんですよ」
妖怪相手に取引の類は無償で出来ない。たまもが言った事である。たまもの力を借りるには相応の対価を払う必要があり、実際に俺は呪いに関する情報を得るために、こうして今居る喫茶店で彼女に食事を提供するに至ったわけだ。であるならば、当然ここで一つ目妖怪捜索のためにたまもの協力を仰ぐには別途見返りを支払う必要があるという事。そして、それが問題なのだ。なぜならこの際のたまもへの謝礼が、俺の支払い能力を有に上回るであろうからだ。
その瞬間、今度は奇異な言葉すら出なかった。
数秒の後、俺は何とか言葉をひねり出す。
「協力してくれるんですか?」
「当然じゃろ」
たまもは宝石みたいに光を乱反射させる綺麗な紅色の瞳で俺を見据えながら即答する。
大妖怪白面金毛九尾が何処にでも居そうで三流っぽい一つ目妖怪の確保に協力してくれる。普通に考えれば願ってもない話である。それはもう歓喜に打ち震えて然るべきである。しかしながら、なまじ妖怪との付き合いに心得が有るばかりに、俺は大いに逡巡してしまうのだった。
「うおい! 何じゃ、その態度は! 妾の助力が不満なのか?」
たまもは二つ返事で同意を得られるとでも思っていたのだろうか、不機嫌そうに片眉を吊り上げる。
「いや、そんなつもりは……」
「では何故じゃ? この白が直々に手を貸そうと言うのじゃぞ。本来ならば泣いて懇願しても叶わぬような有難~い申し出じゃ。迷う要素など皆無じゃろ。何故お主は躊躇うのじゃ? アレか、阿呆なのか? お主は阿呆なのか陽光女傭?」
大事な事なので二回言いました的なノリで阿呆を連呼せずとも、事の希少性は理解しているつもりである。だが幾ら希少だろうと、有り難かろうと、安易に頼めない事情が俺に有るとするならば、二の足だって踏むというものだ。
「むう? 妾の好意に二の足を踏む事情じゃと? 言うてみぃ。但しその事情とやらがくだらん事じゃったら承知せぬからな」
語尾に僅かな威圧を伴ったたまもの問いに気圧されつつ控えめに答える。
「……実のところ見返りを支払えそうにないんですよ」
妖怪相手に取引の類は無償で出来ない。たまもが言った事である。たまもの力を借りるには相応の対価を払う必要があり、実際に俺は呪いに関する情報を得るために、こうして今居る喫茶店で彼女に食事を提供するに至ったわけだ。であるならば、当然ここで一つ目妖怪捜索のためにたまもの協力を仰ぐには別途見返りを支払う必要があるという事。そして、それが問題なのだ。なぜならこの際のたまもへの謝礼が、俺の支払い能力を有に上回るであろうからだ。